2023年は真鍋慧選手(広陵高校→大阪体育大学)、2024年は箱山遥人選手(健大高崎高校)、清原正吾選手(慶應大学)といった有力選手がドラフト会議で指名されなかったことの理由として言われている「順位縛り」。
順位縛りとは氏名を受ける側が「この順位以上でない場合、指名を受けても入団しない」ことをプロ野球球団側に伝えるものです。
多くの球界OBも「結果を残せばドラフトの順位は関係ない」と言ってはいるものの、やはり上位指名を受けた選手の方が多くのメリットも享受できるようです。
そこで今回は順位縛りのメリットについて、さらにこの順位縛りについて、プロのスカウトはどのように捉えているのかまとめ、解説していきます。
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順位縛りは昔からあったが、注目を集めたのが2023年
「順位縛り」はドラフトでは決して珍しいことではないようです。
実際、2023年・2024年のドラフトでも「3位縛り」、「4位縛り」、「支配下縛り」といった条件付きの選手が多く存在しそうです。
2023年で最も話題となったのが広陵高校の真鍋慧選手ですが、仙台育英高校のエース左腕として学校を東北地方の学校初の夏の甲子園優勝に貢献した仁田陽翔投手も、育成はNGという「支配下縛り」を各球団に伝えていました(ドラフト会議中に育成契約ではダメか、と須江航監督に連絡があったそうですが)。
かつては学校に対して苦情の電話が殺到したことも
この順位縛りで世の中の注目を集めたのが2016年のドラフトで日本ハムから6巡目で指名を受けましたが、指名を拒否した履正社高校・山口裕次郎選手でした。
山口選手はドラフト前、調査書が届いた球団に対して「4位以下の指名ならJR東日本に進む」と通達していました。しかし、日本ハムは希望順位以下の6位で強行指名。結果的に山口選手は激しいバッシングにさらされ、高校にも抗議の電話が殺到する事態となってしまいました。
批判の中身は「けしからん」
山口裕次郎選手へのバッシングについて、その多くが「指名されたのに入団しないとは生意気だ」「プロに入れば順位など関係ない」「わがままを言うな」「下位なら入団しないなんて気持ちでは、どちらにしても大成しない」といった、根拠もない、「けしからん」という感情だけの、心無い声でした。
さらに、球界OBの中にも「社会人経由でプロ入りできる保証もないんだから、指名されたら入団するべき」というコメントもありました。
順位縛りのメリットは?
順位縛りをして入団するメリットはいくつかあるようです。
その中でも「与えられるチャンスが違う」という点についてみていきます。
与えられるチャンスが違うというメリット
与えられるチャンスの数がドラフトの順位で大きく異なるのは間違いありません。
例えば1位指名選手の場合、チーム内では「1番の評価」を受けて入団してきます。とすれば、当然、指導者も積極的に起用することになります。
将来の主軸候補であれば、多少の実力差には目をつむって、「我慢して起用する」ことも少なくありません。
一方で下位指名選手にとってチャンスは”与えられるのではなく、つかむもの”です。
もちろん、巨人の戸郷翔征投手やメッツの千賀滉大投手など、少ないチャンスをつかんで日本代表の主力にまで上り詰めた選手も大勢いますが…
また、1年目から年俸1000万円以上、契約金1億円が相場のドラフト1位選手を積極的に起用しないことは、経営的にも理にかなっていません。
評価も、投資額も大きい分、やはり上位選手は下位選手よりも「猶予」として与えられる期間が長いようです。
順位縛りの背景には進路も
2024年の関西大学・金丸夢斗投手や明治大学・宗山宗選手といった「ドラフト指名間違いなし」の選手はプロ以外の進路を考える必要はありませんが、評価が微妙な選手の中にはプロ入りが実現しなかった場合の進路を考えている場面も少なくないようです。
進む大学や企業(実業団)が内定しているケースもあり、その受け入れ先から「順位縛りをしてほしい」と言われることもあるようです。
それは、大学や企業側にも枠はあり、希望を伝えるのも当然と言えますよね。
受ける側と指名する側では順位が”2”も違うことも
順位縛りについて選手側と球団側で「指名に関する認識」に解離があることがあるようです。
あるスカウトは「そもそもマスコミの報道ほどこちら側の評価が高くないってことは、よくありますよ」と語っています。
その背景として、マスコミが一度きりで、いつ出たのかわからない<最速150キロ>や、一世一代のプレーを取り上げて<プロ注>にすること、つまり、その選手の<点>だけで、大きく取り上げて持ち上げることがあるようです。
それにより、評価が微妙な選手でも「2位縛り」「3位縛り」という社会人チームからの制約もすごく増えてきたようです。
一方で、プロのスカウトはその選手を何年も何度も見ていて、<線>で評価を決めていきます。つまり、マスコミやドラフト候補の選手(受け入れ先)の順位とプロのスカウトでは評価が変わってくるようです。
そうなると、スカウトからしたら『4位ぐらいかなぁ』という選手が2位縛り、『5位か下位指名だろ』という選手が3位縛りということが発生するようです。
つまり、スカウトの評価とは、おおむね2巡差ぐらいという解離が生まれることもあるようです。
最後に
今回はドラフト会議における順位縛りについてのメリットとスカウト、選手(受け入れ先)との間での順位認識の差についてまとめてきました。
ドラフト上位であればあるほど、与えられるチャンスや、待ってもらえる期間が長くなってきます。さらにファンからの注目も多く集めることもできますよね。
こう考えるとよりチャンスを得られやすくなるよう、力を付け直してからドラフト指名を待つというのも賢明な判断のようにも思えますよね。
2023年の真鍋慧選手、24年の箱山遥人選手や清原正吾選手がさらに力をつけ、競合指名の評価を勝ち取るのも楽しみに待ちたいですね。
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